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南魚沼市
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ユネスコ無形文化遺産「小千谷縮・越後上布」

掲載日:令和6年2月19日更新

雪国の風土が育んだ織物、越後上布

雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に洒ぎ、雪上に晒す
雪ありて縮あり
されば越後縮は雪と人と気力相半ばして名産の名あり
魚沼郡の雪は縮の親といふべし

【『北越雪譜』 初編 巻之中 縷綸(いとによる)】

(写真)上布反物

塩沢出身の商人であり、江戸時代の大ベストセラー作家である鈴木牧之は、越後上布について、著書『北越雪譜』の中で上記のようにうたっています。

冬の間に大量に降り積もる雪、そこから発生する豊富な湿り気、きれいな空気と水、そして何より、何か月も雪に閉ざされる生活の中で培われた人々の忍耐力と誠実さ。それらが相まって越後上布は生まれたのです。

国の重要無形文化財指定項目

越後上布の製造工程は60以上にもおよびますが、「国指定重要無形文化財」の指定技術によって製作された「越後上布」と認められるには以下の5つの工程を経ていることが求められます。

  • すべて苧麻(ちょま)を手績み(てうみ)した糸を使っていること
  • 絣模様(かすりもよう)を付ける場合は、手くびりによること
  • 居座機(いざりばた)で織ること
  • しぼ取りは湯もみ、足踏みによること
  • さらしは雪晒し(ゆきざらし)によること

一反分の糸を作るのに苧績み(おうみ)で5か月、くびりで2か月程かかり、一反織るのに無地の布でも3か月かかるというのですから、越後上布がいかに大変な時間と手間をかけて作成されることが分かります。そして、越後上布の原料となる苧麻(ちょま)は乾燥に大変弱く、製作作業中は常に多くの湿気が必要です。冬期間、大量の雪に覆われる南魚沼は多湿な環境となり、農業によって収入が得られなくなる間の手仕事として、越後上布の製作は最も適していました。そのため、江戸から明治にかけての一大産業となるまでに発展したのです。

鈴木牧之が言うように、越後上布はまさに、雪の中から生まれ、雪国の人々と、その文化とともに育った織物といえるでしょう。

越後上布の主な製作工程

糸づくり:苧績み

原料の青苧(苧麻から繊維のみを取り出したもの)を細く裂き、繋いで一本の長い糸にする作業です。越後上布にとって糸の質は非常に重要で、苧績みの良し悪しで布自体の良し悪しも決まるといわれます。

糸づくり(苧績み) 青苧と糸

模様付け:絣くびり

越後上布は織りあげる前に糸を染め、模様付けをする先染めの織物です。絣くびりは、模様の中で白抜きや薄い色を後でつける部分を目印に従って、綿糸で縛り、染料に染まらないようにするという技術です。越後上布をはじめ、塩沢で生産される織物は非常に細かく繊細な絣模様が特徴で、くびる部分も多く高い技術が求められます。

絣くびり 絣くびり(手元)

製織:いざり機(地機)

越後上布は「いざり機(地機)」と呼ばれる伝統的な構造の織機を使います。この織機は一般的な手織り機の「高機」と違って、より湿度が高い床に使い位置で織ることができます。また、織り手がシマキという腰当で織機と繋がり、経糸の張り具合を調節するのも特徴です。

いざり機 いざり機(手元)

仕上げ:湯もみ・足踏み

「湯もみ」は織りあがった反物を湯の中でもみ洗いし、製作過程で付いた糊や汚れ、余分な染料を落とす作業です。小千谷縮の場合は、この時に「シボ」という凸凹を出すように揉みだします。

「足踏み」は全身の重みと力を使って、湯舟に漬けた反物を足で揉み洗いする作業です。この軽快なリズムは魚沼地域では春の訪れを告げる音色として親しまれてきました。

湯もみ 足踏み

仕上げ:雪ざらし

2月後半~3月の晴天の日に織りあがった反物を雪上にさらします。雪(水)が太陽光で蒸発し、水蒸気になるときに起きる殺菌・漂白作用で、汚れや余分な染料などを漂白し、布の色や模様を鮮やかに仕上げます。この作業風景は、魚沼地方では春の訪れを告げる風物詩として親しまれてきました。

越後上布の雪ざらし 雪ざらしをする職人

世界に認められた製作技術

平成21年9月30日、「小千谷縮・越後上布」がユネスコ無形文化遺産代表リストに登録されました。古代から変わることなく受け継がれた製造技術が、世界にも認められたのです。

ユネスコ無形文化遺産代表リスト全232件のうち、日本からは20件の登録を果たしていますが(平成23年11月現在)、染織部門では日本初の快挙となりました。

郷土の誇りとして、登録の今後に期待します。

(写真)越後上布の着物

文化庁の無形文化遺産紹介ページ

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