掲載日:平成31年2月1日更新
「知らざあ、言ってきかせやしょう」
南魚沼の冬を彩る行事やイベントがめじろ押しです。多くのローソクの灯が幻想的な「しおざわ雪譜まつり」もその一つです。毎年恒例の地歌舞伎の公演も。
今回、まさかの出演依頼が私に。「盛り上げるために」との強い要請に抗うことができず、2月16日(土曜日)の舞台に立つことに。
表題の名口上で有名な「白浪五人男」の「稲瀬川勢揃いの場」。五人の中で一番の若手、荒くれの南郷力丸役に。「清水の舞台から…」の思いでやってみます。
雪深い当地で、昔は大変な楽しみであったという地歌舞伎。多くの村々で時々に舞台がかけられたそうです。隣の家の親父さんや若手衆が役を演じる。「あの役はあそこんしょのじさまがうまかった」とか、そういう風情。
冬の夜なべ仕事の囲炉裏端でセリフの練習をしたとか。無類の歌舞伎好きだった私の亡祖母は自分は演ずることはなかったが、作業の手を休めずに練習を聞きながら、「(今のセリフは)ちっと違うってだの」と、すべて諳(そら)んじていたと。
晩年、孫の私たちが東京銀座の歌舞伎座に連れて行った際には、セリフ解説のイヤホンを渡そうとすると「おら、みんなわかるすけ、いらね」と言い、驚かされたことを覚えています。そういう人が多くいたのでしょう。
塩沢には、昭和初めごろの古い覚書(おぼえがき)帳が残されていて、見せていただくと素人の地元一座が、遠く他県にまで公演に出かけていることなどが記されていました。上越線全通よりも前、どうやって荷を運んだのか。
旅の一座が魚沼で興行する際は、他の地方と違い観る目が肥えているためひときわ緊張をしたとも。雪は深いが交通要衝の当地、雪に閉ざされているだけではない、明るい外向性や文化性を垣間見るようで興味が湧いてきます。
さて、演じさせていただく五人男は天下の盗人集団。現代で言えば魅力あるあのルパン三世に通ずる卑怯未練のない悪党ども。南魚沼の元気発信のお役に立てますか、どうか!