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ホーム市長の部屋市長日記「無罣礙(むーけーげー)」令和元年度/平成31年「むーけーげー(無罣礙)」 令和2年3月1日

「むーけーげー(無罣礙)」 令和2年3月1日

掲載日:令和2年3月1日更新

「頼もしい君たち」へ

不安がなかったと言えばうそになるかもしれません。
日本と韓国との交流の中止や延期が相次ぐ中で、昨年12月末に敢行した日韓友好中学生派遣事業。
平昌(ピョンチャン)郡大関嶺(テグァルリョン)中学校との32年に及ぶ相互交流は、これまで国家間の領土や歴史問題で継続が危ぶまれた時でも、一度も途絶えることなく続けられてきました。
それが全国で唯一と評価され、平成30年には一般財団法人高円宮(たかまどのみや)記念日韓交流基金から表彰されました。

棒鱈(ぼうだら)生産が主たる生業だった寒村から、冬季五輪を開催するまでに発展を遂げた平昌。
30余年前、韓国初のスキー場建設に、当市の技術者が招聘(しょうへい)されたことをきっかけに、始まった相互交流です。

心配などは杞憂(きゆう)で韓国のみなさんは大変な歓迎ぶりであり、派遣生は立派に交流を果たしたと。訪韓直前には駐新潟大韓民国総領事の鄭美愛(ジョンミエ)氏がわざわざ当市におこしになり、派遣生を激励してくれました。外交筋からの温かいご配慮に心から感謝したい。

本稿を書くにあたり、思い立って書斎で本を探しました。
司馬遼太郎が小学生向けに書いた『21世紀に生きる君たちへ』という随筆です。作家が遺書のように記したという作品の中で「自分にきびしく、相手にはやさしく、いたわりを持つ。それらを訓練することで、自己が確立され″たのもしい君たち″になっていく。
以上のことは、いつの時代になっても、人間が生きていくうえで、欠かすことができない心がまえというものである。君たちはつねに晴れあがった空のように、たかだかとした心を持たねばならない(要旨)」と語りかけています。

交流事業のこれからに思いを巡らす私は、不思議にすっと得心(とくしん)できた気がした。
性急に結果を求めたがる余裕を欠いた世相ですが、私たちは彼らを信じて、機会を与えるだけでいいのではないか。
司馬はこう締めくくる。「書き終わって、君たちの未来が、真夏の太陽のようにかがやいているように感じた」と。あとは彼らが考えればいい。

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