掲載日:令和8年3月1日更新
猪谷千春さんのささやき
スキーが日本に伝えられて115年。このスキーというものが、どれだけ雪国を劇的に変えてきたか。全国で作られた多くのスキー場は、それまで強いられてきた冬季の家族離散の悲哀、出稼ぎ解消の宿願をかなえました。経済だけでなくそこに生きる人々の心も豊かにし、世界につながる光も。
閉幕したミラノ・コルティナ冬季五輪。素晴らしい雪氷上の戦いに心躍りました。4年前に本コラムに書いた当市と縁ある高梨沙羅選手のリベンジにも。猪谷千春さん(94歳)のことが、報道で何度も取り上げられていました。氏は五輪の持つ平和貢献の力を語り、「五輪が戦争に勝つ世界にしなければ」と。遡ること70年前に開かれたコルティナ・ダンペッツォ冬季五輪、アルペン男子回転競技で銀メダルを獲得し冬季初のメダリストに。この時、史上初のアルペン三冠王はトニー・ザイラーさん。それに次ぐ銀。世界にスキーブームを巻き起こしました。IOC(国際オリンピック委員会)副会長も務められ、東京都スキー連盟や石打に縁あるスキークラブの会長だった猪谷さん。30歳代の私は石打代表として数多くのスキー競技会の運営に携わらせていただいていたため何度もお会いしてきました。現役時代、「黒猫」と評された荒々しいイメージとは逆に、常に優しく静かな語り口と紳士な振る舞いが魅力的な方ですが、氏の大きな功労は、ナショナルトレーニングセンターの創設。現在の我が国のスポーツ力向上の基盤に。「しかし林さん、冬季がないのだよ。」とある時、話された。夏の競技と違い都市には作れない。全国の最適地にジャンル別で、それは各地方を興し潤す効果もある、と。
今大会、市のモンスターパイプで練習もしてきた金メダルの戸塚優斗選手など多くのヨネックスチーム関係者が大活躍。南魚沼の貢献に胸を張りたい。出場にはならなかったが、南魚沼から挑戦し続けた田中友里恵さん、羽吹唯人さん、山本大晴さんなど多くの若者たちもいる。雪に「活きてきた」多くの先人。永い、向上心の系譜。私たちにできることは何か。猪谷さんの思いに耳を傾けたい。
