ユネスコ無形文化遺産「小千谷縮・越後上布」
掲載日:平成28年11月29日更新
雪国の風土が育んだ織物、越後上布
雪中に糸となし、雪中に織り、雪水に洒ぎ、雪上に晒す
雪ありて縮あり
されば越後縮は雪と人と気力相半ばして名産の名あり
魚沼郡の雪は縮の親といふべし
【『北越雪譜』 初編 巻之中 縷綸(いとによる)】
塩沢出身の商人であり、江戸時代の大ベストセラー作家である鈴木牧之は、越後上布について、著書『北越雪譜』の中で上記のようにうたっています。
冬の間に大量に降り積もる雪、そこから発生する豊富な湿り気、きれいな空気と水、そして何より、何か月も雪に閉ざされる生活の中で培われた人々の忍耐力と誠実さ。それらが相まって越後上布は生まれたのです。
国の重要無形文化財指定項目
越後上布の製造工程は60以上にもおよびますが、「国の重要無形文化財」と認められるには以下の5つの工程を経ていることが求められます。
- すべて苧麻(ちょま)を手績み(てうみ)した糸を使っていること
- 絣模様(かすりもよう)を付ける場合は、手くびりによること
- 居座機(いざりばた)で織ること
- しぼ取りは湯もみ、足踏みによること
- さらしは雪晒し(ゆきざらし)によること
一反分の糸を作るのに苧績み(おうみ)で5か月、くびりで2か月程かかり、一反織るのに無地の布でも3か月かかるというのですから、これだけ見ても、越後上布が大変な時間と手間をかけて作成されることが分かります。そして、越後上布の原料となる苧麻(ちょま)は乾燥に大変弱く、上布を製造するには常に多くの湿気が必要です。その点、大量の雪に覆われた塩沢では常に多くの湿気を得ることができ、冬の間の手仕事として、越後上布の製造は最も適していました。そのために、江戸から明治にかけての一大産業となるまでに発展したのです。
牧之が言うように、越後上布はまさに、雪の中から生まれ、雪国の人々と、その文化とともに育った織物といえるでしょう。
写真上段左より、苧績み(おうみ)・手くびり(てくびり)・居座機織り(いざりばたおり)
下段左より、足踏み(あしぶみ)・雪晒し(ゆきざらし)
世界に認められた製造技術
平成21年9月30日、「小千谷縮・越後上布」がユネスコ無形文化遺産代表リストに登録されました。古代から変わることなく受け継がれた製造技術が、世界にも認められたのです。
ユネスコ無形文化遺産代表リスト全232件のうち、日本からは20件の登録を果たしていますが(平成23年11月現在)、染織部門では日本初の快挙となりました。
郷土の誇りとして、登録の今後に期待します。