掲載日:平成29年9月27日更新
平成29年9月2日(土曜日)に工事現場の現地説明会を開催しました
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修理工事実施設計
これまでの調査成果に加え、平成28年度に行った解体工事によって得られたデータをもとに、石垣の積み直しのための設計図を作成しました。
専門家によって組織される坂戸城跡保存整備委員会で設計内容を検討し、石垣の積み直しを行います。
解体後の南石垣
青色(実線)の石は解体をした石をそのまま使って積み直します。緑色(点線)は河川護岸工事で使用された転用石を選別して使います。赤色(破線)は新たな石を購入して積み直します。
保存整備委員会の様子
保存整備委員会の様子
石垣修理工事と立ち入り禁止区域について
8月1日から現地作業を開始しました。現地作業は9月上旬までの予定です。
居館跡の散策道は通常どおり通行や見学可能ですが、ロープの内側は重機が動いており大変危険ですので立ち入り禁止です。
大変ご迷惑をおかけしますが、ご協力の程よろしくお願いいたします。
石垣修理工事の方法
丁張りの設置
「丁張(ちょうは)り」とは、石を積む角度の目安とするために設置する、木の杭と板を組み合わせたものです。残存する石垣に板を沿わせて基準の角度を設定します。坂戸城の石垣の場合、場所によって石の角度が異なるため、慎重に議論を重ね角度や天端の高さを設定しました。
旧石材の補修
解体した石は原則的にはそのまま原位置に戻します。しかし、石材の中にはヒビが入っていたり、割れてしまったものもあります。石の割れ方や石を載せた時にかかる重量などを考慮し、再利用できる石は接着剤で補修して使用します。
割れた石の面に接着剤を薄く均等に塗ります。
ピッタリと合うように慎重に接着します。
補修前の石です。右上が割れています。
ヒビに接着剤を入れて補修しました。
石垣背面の清掃
石垣の背面には裏込石・栗石(ぐりいし)と呼ばれる握りこぶし大の大きさの石が充てんされています。この石は排水や背後の土塁の土圧を抑えるなどの役割があるといわれています。また、石垣の石がずれたりしないように石の下に栗石を噛ませることもしています。
石垣を解体して内部の栗石を観察すると、土が流入していたり、細かく割れてることがわかりました。石垣を積みなおす前にこれらの割れた栗石や土を取り除きます。
清掃前の栗石です。細かく割れた石や土が大量に流入しています。
細かい石や土を取り除くと、本来の栗石が姿を現します。
積み直し
取り外した石を積み直します。丁張りに水糸を張り、それを見ながら勾配や位置を調整し慎重に石を置きます。石が安定するようにすきまに石を詰め、最後に背面に栗石を充てんさせます。
ワイヤーで吊るしながら角度と位置を慎重に合わせて石を置きます。
角度と位置が決まったら、動かないように石の下や背後に石を噛ませて固定します。
背後に栗石を充てんします。
この作業を繰り返して目標の高さまで石を積みます。
間詰め
積み直した石と石の隙間に補強のため小ぶりの石を詰めます。この石を間詰石(まづめいし)と呼びます。
現存する北石垣では間詰石はあまり見られませんが、発掘調査の際、土に埋もれていた部分には間詰石が見られたため、南石垣もそれに合わせて復元しています。
隙間に石を詰めていきます。
北石垣の間詰石です。石垣下部の苔が生えていない部分が土に埋もれていた部分で、間詰石がよく残っています。
天端の仕上げ
坂戸城跡では石垣の最上段の石である天端石(てんばいし)は残っていませんでした。根拠のない復元はすることができないため、北石垣を参考にして天端を仕上げることとなりました。
裏込石に土が流れ込まないように不織布を敷きます。
埋め戻します。
転圧します。
最後にきれいな土を入れて仕上げます。
平成29年度の工事が完了しました
残りの南側半分は平成30年度に工事の予定です。