掲載日:平成29年11月1日
乳児に対する心肺蘇生法を学びましょう
乳児は1歳未満をいいます。
乳児の場合は、成人に比べて呼吸が悪くなったことが原因で心停止に至ることが多いため、人工呼吸も合わせた心肺蘇生ができるようになることが望ましいと考えられます。
また、体の大きさが違うことなどの理由から、適した救命処置のやり方がありますので、ここでは乳児に対する救命処置を学んでいきましょう。
乳児の心肺蘇生法
ここでは乳児に対する心肺蘇生法の一連の流れを紹介します。
反応の確認
声をかけながら反応があるかないかを確かめます。足の裏を刺激することも有効です。
119番通報とAED手配
近くに協力者がいる場合
反応がなければ、大きな声で助けを呼び、協力者に119番通報とAEDを依頼します。
近くに協力者がいない場合
近くに誰もいない場合は、心肺蘇生を始める前に119番通報とAEDの手配を行わなければなりません。この場合、AEDを取りに行くために傷病者から離れてよいのか心配になるかもしれませんが、すぐ近くにAEDがあることがわかっていれば取りに行ってください。
119番通報をすると、通信指令室員から心肺蘇生法の手順など、指導を受けることができます。
呼吸の確認
普段どおりの呼吸をしているか、10秒以内で胸やおなかを見て判断します。
胸骨圧迫30回(心臓マッサージ)
圧迫の位置は、両乳頭を結ぶ線の少し足側を目安とした胸骨の下半分です。
胸骨圧迫は指2本で行います。
速さは1分間に100回から120回の速いテンポで、連続して絶え間なく行います。圧迫を緩めるときには、胸が元の高さに戻るようにします。
圧迫の強さは、胸の厚さの約3分の1を目安とします。乳児だからといって、こわごわと弱く圧迫したのでは効果が得られません。
「強く、早く、絶え間なく」行うことが重要なポイントです。
人工呼吸2回
気道確保を実施して人工呼吸を2回行います。
片手を額に当て、もう一方の手であご先を上げ、気道の確保を行います。その際、極端に頭を後屈させるとかえって空気の通り道を塞ぐことになりますので、気を付けましょう。気道を確保したまま、額に当てた手で鼻をつまみ、口を大きく開けて傷病者の口を覆い、息を1秒かけて胸の上がりが見える程度の量を吹き込みます。いったん口を離し、同じ要領でもう1回吹き込みます。
乳児の大きさでは、口対口人工呼吸を実施することが難しい場合があります。この場合は、乳児の口と鼻を同時に自分の口で覆う口対口鼻人工呼吸を行います。
胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返す
胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返し行います。乳児では呼吸が悪くなったことが原因で心停止に至ることが多いため、できるだけ人工呼吸をあわせて行いましょう。
AEDの使用
ここでは、乳児に対するAEDの使用方法について説明します。
注意:説明を分かりやすくするため、AEDのみの使用方法ですが、実際は心肺蘇生法を継続しながら実施します。
電源を入れる
AEDの電源を入れます。ボタンを押して電源を入れるタイプと、ふたを開けると自動的に電源が入るタイプがあります。
電源を入れたら、それ以降は音声メッセージに従って操作します。
成人用モードと小児用モードの切り替えがあるものは、小児用モードに切り替えます。
電極パッドを貼る
電極パッドを取り出し、描かれている絵のとおりに貼り付けます。胸が濡れていたらふき取り、肌に密着するようしっかりと貼ってください。機種によっては電極バッドのケーブルを接続するために、AED本体に電極パッドのコネクターを接続します。
小児では身体が小さいため、電極パッド同士が接触しないように胸と背中に貼ることもあります。(画像参照)
小児用の電極パッドが入っている場合には、小児用の電極パッドを使用してください。小児用の電極パッドがない場合、成人用の電極パッドを使用することができますが、パッド同士が接触しないように注意が必要です。
心電図を解析中は傷病者に触れない
電極パッドを貼り付けると、「体に触れないでください」などのメッセージが流れ、自動的に心電図の解析が始まりますので、誰も傷病者に触れていないことを確認します。
除細動メッセージが流れたら、ショックボタンを押す
AEDがショックが必要と判断したら、自動的にエネルギー充電を始めます。充電が完了したら、誰も傷病者に触れていないことを確認し、ショックボタンを押します。
AEDがショックは不要と判断した場合は、すぐに胸骨圧迫を再開します。
心肺蘇生法の継続
心肺蘇生法を再開して、2分ごとにAEDが自動的に心電図の解析を行います。音声メッセージに従ってください。
協力者がいる場合は協力しながら救急隊が来るまで行いましょう。
救急隊に引き継いだ後は…
応急手当が必要な現場に遭遇すると、心的なストレスによって不安感や気分の落ち込みなどが生じるかもしれません。そのようなことが生じた場合には、自分一人で思い悩まずに、身近な人や専門家等に相談してください。
気道異物の除去方法
口やのどなどに異物が詰まっている場合に、異物を取り除く方法を紹介します。
気道異物による窒息と判断した場合には、直ちに119番通報を周りの人に依頼し、次の2つの方法で異物の除去を行います。
背部叩打法(はいぶこうだほう)
救助者の片腕の上に乳児をうつぶせに乗せ、手のひらで乳児の顔を支えながら、頭部が低くなるような姿勢にします。もう一方の手の付け根で、背中の真ん中を力強く数回連続してたたきます。
胸部突き上げ法
救助者の片腕の上に乳児の背中に乗せ、手のひらで乳児の後頭部をしっかり支えながら、頭部が低くなるよう仰向けにし、もう一方の手の指2本で、両乳頭を結ぶ線の少し足側を目安とする胸骨の下半分を力強く数回連続して圧迫します(胸骨圧迫と同じ要領です)。
注意事項
- 乳児には、腹部突き上げ法を行ってはいけません。
- 反応がなくなった場合には、乳児の心肺蘇生の手順を開始します。